とうとう開店前夜 と やっと書店の話(*取材はしてません)
世間には、実にさまざまな本屋があります。
あなたの身近にも、お気に入りの一店、気に入る入らないに関わらずここに行くしかないという一店、
または、人に教えたくないけど実は街の自慢、というような一店があるのではないでしょうか? 今日の主役は、冬の京都に2週間だけ現れる “三条富小路書店” です。この店は、2010年の冬、京都のちいさなギャラリーに突如オープンしました。
きっかけは“こんな場所に、皆の手作りした本を見たり買ったりできる本屋さんがあったらいいのに” と思った2人の女性です。
「あるとき思ったんです。私のまわりには、勉強中の美大生や、デザイナー、或いは全然絵を書くような仕事じゃないけれど趣味で写真を撮ったり、作品を本にまとめたり、面白い日記を描いている人が沢山いたのに、そんな作品に触れる場所がないのは 凄くもったいないことなんじゃないかって。」* そう思ったのは、彼女たちだけではなかったようです。
自分の作った本を、普通の書店で売ることはできなくても、もっと沢山の人に見てほしいと思った人。
そんな人たちの作る小さな本や作品の世界に、もっと間近で触れてみたいと思った人たちが、想像以上に沢山いたのです。 自作の本を持ち寄る人たちの多くは、それを普段の仕事にはしていません。
彼らのほとんどは、仕事や家事、寝る時間をやりくりして、思い思いに作品をつくり上げているのです。
「私は子供もいるので、よくそんなこと続けられるねと言われることもあります。でも、本当は、日常生活のなかで次の作品のヒントが得られたり、子供に喜んで欲しくて作ったものがあったり。確かに時間をつくるのが大変な時もありますが、普段の生活も本作りも、お互いに支えあっている関係だと思っています。」* さて、今年も全国から個性溢れる本が集まってきました。
荷物を開封したばかりの店内は、大小さまざまな本、中にはぬいぐるみや帽子などもひしめいて、おもちゃ箱をひっくり返したようです。彼らは今夜中に、本棚のどこかに居場所を決められて明日の開店を待ちます。真夜中のおもちゃ売り場で、クマのぬいぐるみやドレスのお人形が、子供たちがやって来るのを待つかのように。「ボクは、人前に出るのは明日が初めてなんだ。とっても緊張してるけど、楽しみだよ。勿論、ボクを気に入って買ってくれる人がいたら最高だけど・・・沢山の人がボクを手にとって、読んで、喜んだり何か考えてみたり、そんな風にしてくれたら嬉しいよ。」* いよいよ明日から、今年も2週間の営業がはじまります。
どんな人たちが来てくれるのか?店員も本たちも、緊張と期待を胸に開店を迎えます。 *今回は、実際のお話に基づいたフィクションです。「」内は想像で、誰にも取材はしていません。
写真:緊張と期待